#035
2024.09.10
自分がベストだと考えた選択ならきっと頑張れる。
見える世界が広がった愛知県主催のプロジェクト。
総合政策学部総合政策学科宮本 彩加 さん
日頃から見ていたニュース番組をきっかけに、環境やSDGsに興味を持った宮本さん。そんな彼女が大学進学に選んだのは総合政策学部。そして、入学早々その枠を飛び越えて1年生ながらチャレンジしたのは、愛知県主催の企業・団体と大学生が取り組むプロジェクトでした。この活動で目の当たりにした社会問題の解決の難しさや、企業で働く大人達の姿とは。また高校時代に抱えた葛藤を経て、大学生になった今感じる思いとは。日進キャンパスでインタビューしました。
受験なのに勉強への意欲がわかない。高校3年時に訪れた苦悩。
今だから言えますが、高校時代は人生の中で1番しんどかった時期でした。中学時代に選手として頑張っていた陸上を、高校ではマネージャーとしてサポートしたくて陸上部に入りましたが、想像と異なり退部。その後、別の部活動に入りながら「勉強にも集中!」と切り替えて、放課後まで残って勉強していました。しかし授業の理解度をはかる小テストでは点数が取れるのに、定期試験では人生初の赤点を取ってしまったことも…。これが引き金になったかどうかはわかりませんが、気持ちがプツッと切れてしまったのは確か。部活動をやりきった同級生のように、受験に向けて気持ちを切り替えるきっかけがなかった私は、焦るばかりで、急降下するモチベーションをどうすることもできずにいました。
できないものはできない。だけど諦めたくないから、もがき続けた。
受験勉強に向き合えない状態に陥った私を見て、両親や2人の姉、弟もかなり戸惑ったと思います。それまでは放課後も勉強していたのに、何もしなくなったんだから当然です。「勉強しなくて大丈夫?」と言われたこともありますが、基本的には何も言わずに見守ってくれていました。頭ではわかっていても心が動かない、そんなどうしようもない辛さを家族も必死に理解しようとしてくれていたのだと、今なら素直に感じることができます。
そんな状態が続いていましたが、大学進学は諦めませんでした。理由は、大学に進学して充実している姉たちを見て憧れていたから。そして、母の影響で毎日ニュース番組を見るうち、地球温暖化やSDGsといった「環境」に関わる社会問題に興味を持つようになったからです。受験では幅広く社会問題を学べる学部がある国公立大学と私立大学2校を受け、うち愛知学院大学の総合政策学部に合格することができました。
大学から全学生に送られた愛知県主催のプロジェクト応募の案内。
進学をきっかけに、一人暮らしを始めました。初めての経験で楽しみな一方で、日々生活だけで精一杯になりたくない。そう感じたのは、大学に通う1番上の姉が、企業とコラボして子どもと関わるイベントの企画・運営に携わって楽しそうな様子を聞いていたからです。自分もボランティアなどの様々な活動に参加したいと思っていた矢先、大学から全学生に向けて1通のメールが送られてきました。それは、愛知県が主催する大学生を対象にしたプロジェクト『かがやけ★あいちサスティナ研究所』の参加者募集の案内。内容は、参加者が環境問題やSDGsの基礎を学び、その後プロジェクトのパートナー企業・団体から出される課題に対し、チームごとに解決策を研究、立案、ブラッシュアップして最終的に発表するというものでした。6月〜12月という長い期間をかけて、じっくりと興味のある環境やSDGsについて向き合うことができる。何より実社会で活動する企業・団体と関わることで社会の現状をリアルに把握するきっかけになると思い、応募しました。
「仕事」や「働く」とは何なのかを知った会社訪問。
2015年から始まった『かがやけ★あいちサスティナ研究所』には、これまでに愛知県の優良企業や全国展開する企業・団体が多く参加しています。その中で食パンなどで知られるPascoの敷島製パン株式会社のチームを希望しました。Pascoさんからの課題は「健康で豊かな食生活に役立つサステナブルな製品・サービスを考案せよ」。パンという商品を通じて、食料自給率や食品ロスといった日常生活に関わる問題に取り組みたいと思いました。
一緒にチーム活動を行った大学生は、1年生は私のみで、あとは名古屋市立大学、愛知淑徳大学、愛知教育大学の2-3年生でした。活動が始まると全員で会社訪問し、社員の方々に会社について詳しくヒアリング。その時に肌で感じたのは、仕事への並々ならぬ熱意でした。自社の商品やサービスを求める消費者を想像しながら、その先にいる人たちのために何をすべきか、何ができるのかを考え抜いて働いていることをひしひしと感じたんです。正直に言うと、企業は利益を追求するだけ、社員は給料を得るためだけに働いているんだと無意識に思い込んでいました。そうした考えが自分の中に染みついていることにハッとしたほどです。この経験は私にとって、企業の見方、そして仕事への価値観が180度変わった貴重な時間になりました。
働く社会人の知識量とアイデア力に脱帽の連続。
会社訪問で得た情報をもとに解決策を考え始めたものの、想像以上に難しいものでした。私達の出す解決策はどれも理想ばかり…。そんな時、社員の方は常に現実と照らし合わせ、的確な意見や評価をくださいました。ディスカッションに参加した広告代理店の方からも、想像の斜め上をいく切り口やアイデアが溢れ出て、その量と引き出しの多さに圧倒されたのは言うまでもありません。世の中にある商品やサービスが何度もブラッシュアップされ、生み出されている。その凄さをあらためて実感しながら辿り着いたのが、【パンを健幸食に!〜Heals&Well-being for all with Pasco〜】というテーマ。朝食を食べない若者から食べたくても食べられない高齢者まで、各年代が抱えがちな日常を課題に設定し、実際にアンケートを取ったり、インタビューをしたりして現状を分析していきました。
他大学生と活動して作り上げた課題解決案が最優秀賞に。
1つの課題に対して複数の解決策を提案する方向で進めるうちに、現実に取り入れやすいかどうかを念頭に解決策を練っていく過程で思いがけず自分の弱点が浮き彫りになりました。アイデアを出したり深めたりする時に、どうしても世の中にある商品やサービスに肉付けする方法しか思いつかないのです。一方、先輩たちは各自が学んでいる分野の知識を使いながら幅広く考えを深めていて、問題の捉え方や論理的思考といった課題への向き合い方など、今後、大学でゼミに入って取り組む上で必要なスキルを学べたように思います。
こうして試行錯誤しながらまとめた解決策は、若者の生活スタイルに合わせた食べ方を選択できるパンの考案や、食欲を掻き立てるべくASMRによる朝食の調理音の作成。高齢者向けには咀嚼しやすいレシピとともに、学生ボランティアによる食事のサポートを行う案などを盛り込んで発表しました。発表後すぐに審査、集計、結果発表というスピード感で緊張しましたが、なんと私たちのチームは最優秀賞を受賞!想像以上に嬉しい結果とともに、大学や学年の違いを忘れて最後まで諦めずに全員で取り組み続けたかいあって、充実した半年間になりました。
視野が広がって、もっと世の中のことを知りたいと思った。
この活動を通じて、企業で働く人たちの姿勢や熱意、知識量の多さに触れ、「人の役に立つこと」「社会問題の解決に携わること」という仕事に求める軸が見えたように思います。活動が終わった1年生の春休みには、大学の授業とは別に、公務員を志望する学生のための講座を受講しました。消防士である父親の影響も多少ありますが、見る世界がぐっと広がったからこそ、これからも世の中の職業を知る努力を続けたいと思っています。
取り返しがつかなくなるほどの失敗なんて、めったにないから。
大学生活では些細なことにもチャレンジする楽しさを味わっています。一人暮らしも、飲食店でのアルバイトも、自動車免許の取得も。大学でできた友人との交流もかけがえのない時間です。初めて経験することはどれも大変で不安ですが、それ以上に楽しい。そんな気持ちになれたのは、何も身構えずにこの活動に飛び込んで、見るもの聞くものすべてに「すごいな」と純粋に感じることができたからだと思います。
勉強も大学生活も、こんなにも充実して取り組めているのは、自分が納得して進学を決めることができたから。『自信があるから行動できるのではなく、行動するから自信が出て楽しめる』のだと実感しています。その時に自分がベストだと思った道を、自信を持って進めば大丈夫!高校生の皆さんも心のままに、臆することなくチャレンジしてください。