
#040
2025.06.17
「経営」をリアルに学んでわかった。
挑戦は前に進むためにあるのだと。
経営学部 経営学科杉浦 元紀 さん
杉浦さんが「経営」を学びたいと思ったきっかけは、会社を経営する父親の姿を見てきたから。経営学部に進学後、知識はもちろん、ビジネスを疑似体験する学びに多く触れ、在学中に起業も経験しました。成功ばかりでなく、悔しさや不甲斐なさを感じながらも、挑戦する尊さと、それによって大きく広がる可能性を実感したという杉浦さん。コロナの流行とともに始まった大学生活でしたが、杉浦さんのチャレンジ溢れる日々について、名城公園キャンパスでインタビューしました。
小さい頃に目にした父の働く姿と高校時代の先生の支えが、進路を具体化するきっかけに。
僕が「経営」に興味を持つきっかけになった原体験があります。それは、小さい頃によく連れて行ってもらった父の職場。人材派遣業などを行う会社で父が創業しました。従業員200人を超える会社の経営者として、真剣な眼差しで指示を出す姿を見て、子供心に「めちゃかっこいい!」と感じました。家ではいつもおちゃらけているんですけどね(笑)。そんな父の姿が目に焼き付いていたからか「経営って面白そうだな」と思っていましたし、高校に入ると「大学には行っておきたいかも」とぼんやりと考えていました。そして、具体的な進路を検討し始めるようになったのは2年生の時。担任の先生との出会いでした。
当時、サッカー部と並行して、大学進学を視野に勉強にも力を入れていました。ところが成績が上がることで目立ってしまい、周囲の目線や評価などを気にするあまり、気持ちが不安定になってしまったんです。そんな僕の様子を心配した先生は、常に気にかけて声をかけ続けてくれました。その時の先生の言動にどれだけ救われたか。3年生になって担任が変わっても進路相談をお願いするほど信頼を寄せていたこともあり「先生のような教師を目指すのもいいな」と新たな進路の目標が芽生えたのです。とはいえ経営にも興味があるし、どちらを選択しようか…。改めて先生に相談すると、思いがけない言葉が返ってきたんです。

▲幼少期から続けているサッカーを思い切り楽しむために、高校はサッカー部のある学校を選んだ杉浦さん。スポーツが盛んな高校で、特にサッカー部は人数が少ないながらもヤル気に満ち溢れていたそう。サッカー部で充実した高校生活を過ごしました。
ずっと僕のことを見てきた先生の言葉なら信じられる。進路への迷いが消えた。
「絶対に経営をやったほうがいい!」これほどズバッと言われるとは思いもしませんでした。心の奥底で抱いていた経営への憧れと、そのために大学でしっかりと学びたいという思いを、先生は見抜いていたのかもしれません。それと我の強さも(笑)。だからこそストレートな言葉で、背中を押してくれたのだと思います。それを機に迷いは吹っ切れ、進路選択は経営学部のある2つの大学に絞って受験。第一志望は叶いませんでしたが、第二志望の愛知学院大学に合格しました。改めてどんな学びができるのかを調べると、社長数が愛知県NO.1に加え、実践的な経営教育が学べるとのこと。最終的な決断をするべく、自宅のある安城市から経営学部のある名城公園キャンパスを見に行きました。百聞は一見にしかずということわざの通り「ここで学ぶぞ!」という意思が固まりました。

▲城崎先生は高校在学中も卒業後も、いつも背中を押してくれるありがたい存在
コロナの流行とともに始まった大学生活。「困難な時こそ」と勉強に集中。
大学生活のスタートは2020年・春。まさにコロナの流行により緊急事態宣言が発令された時期でした。入学式は当然ながら中止。入学から1度も大学に行くことなく、家で1日中オンラインで授業を受ける日々が続きました。友人関係も広がらず、想像していた大学生活とは大違い。それでも、中学時代に遭った事故で車椅子生活をし、何もできなかった絶望感や、大学進学で第一志望が叶わなかった悔しさに比べたら…と思うと、前を向くことができました。こんな時だからこそ頑張らなければ、一生頑張れない人間になってしまう。長年サッカーをやってきてガッツはあったので、もどかしさを振り払うべく勉強に集中しました。すると、1年が終わる頃には学内で成績優秀者になり、2・3年次には特待生にもなることができたのです。頑張り続けたことが報われた瞬間でした。そしてコロナ禍の中、絶対的な自信をつくることができた1年になりました。
大学生らしい生活を取り戻し、ゼミで学んだ「デザイン思考」に涙?!
2年生になり、ようやく対面授業が再開。ビジネスを疑似体験できる科目や、起業家マインドを培う授業などを体験できるとあって、心からワクワクしていました。さらにゼミも始まるため、様々な先生の基礎演習を受講。その中で惹かれたのが油井先生のゼミでした。商品やサービスを使うユーザー視点を軸に、課題とその解決策を見出し、改善を繰り返すことでよりよいものが生まれる「デザイン思考」を実践的に学ぶ内容でした。また、ゼミ生の中で本気で会社経営に取り組みたい学生がいれば起業をサポートしてくれるという点も興味をくすぐられました。定員20人に対し、応募は80人。念願叶って油井ゼミに入ることができた時は、本当に嬉しくて、興奮が止まりませんでした。
油井ゼミの授業の多くは、ワークショップ形式。最初に先生からレクチャーを受け、その後はすべて自分たちで考え、自分たちで動くことが求められます。バラエティ豊かなキャラクターの学生が揃ったゼミでは、主体的に動く大切さを身を持って学びながら、意見やアイデアを出し合ったり、企画などを詰めていく過程は本当に刺激的でした。創造的で革新的な発想は、こうした多様な考えを持つ人々が集まる中でこそ生まれるのだと感じました。

ゼミ活動で特に心に残ったのが、学生製品開発コンテスト[Sカレ]です。ゼミ内で提案・完結することが多かったこれまでの取り組みとは異なり、実際に企業からいただくテーマをもとに企画開発するのは初めて。しかも、優勝すれば製品化されることもあって気合が入っていました。数ある企業のテーマの中から僕たちのチームが選んだのは【新たな紙製のノート】。早速文房具店に行って商品を隅々までリサーチしたり、店員の方にヒアリングしたり。さらにサンプルを作って、実際に学生に使ってもらってリアルな感想や評価を集めました。
こうしてリサーチや分析を踏まえて「自分の考えをまとめられるノート」というコンセプトのもと、企画から開発、試作品作成、検証まで行うのに約8ヶ月。優勝間違いなし!と自信を持って臨んだコンテストでしたが…残念ながら製品化には至りませんでした。とことんユーザー視点を追求して、製品化ができるように内容や形にも配慮しながら、未来について考えを深められるノートに仕上がったのに…悔しさが込み上げ、コンテスト当日は思わず号泣したほど。そんな姿を見た油井先生からの「アツい人間だな!」という言葉とともにハグされたことも今となってはいい思い出です。


「起業」のチャンスが目の前に!覚悟とワクワクを持って挑戦するも、再び涙。
世の中にある様々な商品やサービスは、使う相手がいてこそ。相手が何を求めているのかを深く考え、自分ならどうするかを考える「思考」を学ぶ中で、「会社経営」という次のステップに挑戦したいと考え始めるようになりました。油井ゼミのメンバーで、同じ志を持つ仲間と起業を決意。3年生の秋、株式会社Unikle(ユニークル)を設立しました。事業内容は、ゼミで学んだ「デザイン思考」を教育現場などで活用できるように、教材やプログラムの企画開発をはじめ、学校や研修現場で教材を使って授業やプログラムを導入する際のサポートなど。事業について具体的に知っていただくための営業活動とともに、CFO(最高財務責任者)も兼任。経営に必要な「ヒト・カネ・モノ」の「カネ」の流れを把握して、財務面から会社の成長や状況を把握し、どのように経営していくか戦略を立てる役割です。

▲油井先生と株式会社Unikleの創業メンバーであるCMOの今さん、CEOの坂くん、CFOの杉浦くん(写真左より)
実は、経営者として覚悟を持って取り組むべく、休学を決断しました。会社を経営する以上、大学生との二足のわらじでは、どちらも中途半端になりかねないと思ったからです。起業後は経営に一点集中。事業に取り組み始めてみると、想像以上に地道な活動が少なくありませんでした。その1つが営業です。
僕達の会社が提供する商品やサービスの対象は、学校や民間企業の人事部などが主な営業先。話し方や態度に学生気分があらわれてしまったことで、お客様からお叱りを受けることもありました。これを機に、挨拶や服装はもちろん、社会人としての立ち居振る舞いなどビジネスマナーを徹底。それでも大学生であることや実績の少なさ故に、なかなか事業の意義や価値が伝わらず、苦労が尽きませんでした。そのたびに情けなくて、不甲斐なくて、帰り道に涙したこともしばしば。CEO(最高経営責任者)の坂くんには、数え切れないくらい励まされました。それでも諦めず、課題が出てくるたびにデザイン思考の基本である解決・改善を繰り返しながら、全国各地を飛び回りました。
そして、1つ1つの取り組みが少しずつ実を結び始めると、実際に活用・導入してくださった方から「杉浦さんのおかげで生徒が楽しそうでした!」「杉浦さんにお願いしたい仕事があって」という声をいただけるようになったのです。
「経営」に集中した時間があったから、就職して新たな世界で挑戦したいと思った。
起業して約1年半。経営に携わったことで、自分たちの商品やサービスを使ってくださったお客様が笑顔になることが、何よりの喜びだと実感しました。泥臭く、地道に、課題が生まれるたびに向き合って、改善を繰り返して。一歩一歩ですが、そのおかげで得られた新たなアイデアやつながりが生まれ、人脈も広がっていきました。
「経営」において必要な知識・スキル・経験は山ほどありますが、そこに人や喜びがあってこそ成り立つものだと知ることができたのも、リアルに会社経営に取り組んだからこそです。とはいえ「社会人」としては半人前だと痛感したのも事実。だからこそ就職して、社会人としての土台をあらためて築きたい。仲間と起業した会社は後輩に引き継ぎ、僕自身は復学して就職活動を始めることにしたのです。

▲会社経営と並行し、2009年に東京大学で始まったイノベーション教育プログラム「i-school」にも参加。1年かけてイノベーションを生み出すプロセスを学びました。
目指した未来をさらに超えていける自分でありたいから、挑戦し変化を起こし続ける。
就活では、学生時代の起業経験が自己アピールにおいて強みになりましたが、経営者として具体的に何をして、どんな成果を残したのかを率直に指摘され、正直悔しい思いもしました。内定が出ずに何度も落ち込みましたが、気持ち新たに踏ん張ることができたのは、ゼミや経営で培ったチャレンジ精神があったから。改めて自己分析をするべく、すでに卒業して社会人として働く同級生にアドバイスをお願いしました。自分の性格に加え、企業が何を求め、人事担当者はどんな点を見ているのかといった内容はリアルそのもの。ちなみに僕の性格は、リーダーシップが強すぎてガツガツ踏み込んだり、興味関心事が多すぎてキャパオーバーしがちなんだそう。一方で明るく、目標達成に向けて地道に取り組めるところは強み。納得しました(笑)。客観的に意見をもらうことは大事ですし、対策を考える上でとても役立ちました。

▲気心知れた地元の友人たち。それぞれ歩んでいる道は違っても大切な「仲間」です
想像以上に超えるべき壁が多かった就活でしたが、社会で活躍する方々に出会い、仕事における考え方や心構え、日常の過ごし方などを聞いて「自分も活躍したい!」という強い気持ちを取り戻しました。その後、目指していたM&A業界の中でも急成長中のスタートアップ企業に内定。「社会で活躍する先輩たちを超える存在になる」。そう決意し、大学卒業後は東京で、社会人1年目をスタートさせます。
考えもアイデアも進む道も、人と違っていい。挑戦を続ければ未来はひらけるから。
最初からチャレンジ精神があったわけでも、何事も迷わずに突き進めたわけでもありません。どのジャンル・大学に進もうか迷いましたし、進学後もコロナ禍、ゼミ、起業、就職活動、それぞれの経験の中で、どうすべきか悩んだ時も少なくありません。それでも自分のことを見てアドバイスをくださる先生、起業仲間、友人たちなど周囲の言葉に耳を傾け、行動をし続けたことで道がひらけたことは確かです。自分の考えやアイデア、選択などが他人と違っても恐れなくていい。むしろ自信に変えていけば良いことを大学生活で深く学びました。

もし高校生のみなさんが進路選択で迷うことがあれば、ホームページやパンフレットから得た情報に加え、可能な限り自分の目で確かめてほしいなと思います。「違うな」と思えば、別の進路を検討する一歩につながるし、納得できれば、先々で何があっても踏ん張れる。僕自身、愛知学院大学に進学を決め、チャレンジできる学びがたくさんある経営学部を選んで、行動する大切さと挑戦への向き合い方を身につけることができました。これは僕の生き方や考え方を支える軸になっています。
誰かにとってはささやかでも、自分にとっては意味がある挑戦。必ず未来につながる一歩になることを、僕は知っています。思うようにいかない時こそ「どうするといいかな」とポジティブ思考で。それを繰り返しながら、一歩ずつ前へ進んでいけますように。少しだけ先を歩く先輩から高校生の皆さんへ、この言葉が少しでも挑戦を後押しする力になったら嬉しいです。
