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#047

小さい頃から家族や病院の看護師さんに体調を支えてもらった経験から、「食」に関わる世界へ興味を広げた赤羽さん。予想外の挫折を味わいながらも、人生の岐路で様々な人から掛けられた言葉を胸に、授業や実習だけでなく食品開発やパッケージデザインなどにも挑戦しました。さらに部活動では、書道を通じて文字に新たな価値と情熱を注入する喜びも経験。大学生活ラストは卒業研究と管理栄養士国家試験に挑戦中の赤羽さんに、「置かれた場所で咲く」と決めて過ごした4年間について、健康栄養学科のある日進キャンパスでインタビューしました。


目指した進路が叶わず、思考停止状態のどん底から背中を押され、愛知学院へ。

幼い時から腹部の不調で通院していたことが、進路選択の出発点でした。優しさとかっこよさを兼ね備えた看護師さんに憧れ、いつしか看護師が将来の夢になっていました。ところが中学卒業・高校入学時に始まったコロナ禍で、医療現場の大変さを目の当たりにしました。懸命に取り組む看護師さんを心から尊敬する一方で、私自身、看護の道を目指す覚悟が足りていないことに気づいたのです。自分の健康をサポートしてもらったことに感謝しつつ、「誰かのすこやかな毎日を、違う形で支えたい」という思いに変化。母が日々気遣ってくれた食事のおかげで、高校生の頃には長年悩まされてきた不調もほぼ完治しました。そして乳酸菌とその菌株に興味を持ち、文理選択では理系に。発酵や微生物の働きについて学びたい気持ちが強くなり、看護とは異なる進路になりましたが、農学部を目指して必死で勉強に励みました。しかし、結果は不合格。難易度が高いことはわかっていながらも第一志望校だっただけに、立ち直れないほど強いショックを受けました。家族や高校・塾の先生方に私の学びたいことが少しでも叶う進路先を提案してもらい、愛知学院大学の健康科学部健康栄養学科も含め、「結果はどうなるかわからないけれど、今から受験できる大学はとにかく精一杯受けよう」という気持ちで臨みました。そして、何よりもう1度顔を上げて受験できたのは、父からの「ピンチはチャンスだから」という言葉でした。私の悔しさや焦りに寄り添い、声をかけ続けてくれた父。おかげでその後の受験は、すべて合格できました。特に愛知学院大学は、栄養から食品、健康まで幅広く学べるカリキュラムであることを知り「ここなら自分の興味を諦めずに学べるかもしれない」と思えたことと、総合大学で部活・サークルが充実していること。この2つが進学の決め手になりました。


経営学部の学生と一緒に取り組んだ授業「バーチャルカンパニー」 で奮い立つ!

健康科学部健康栄養学科は、4年間学ぶと管理栄養士国家試験受験資格や栄養士免許などが得られます。そのため管理栄養士を目指す人のみが集まっていると思っていた私は、入学当初「皆と比べて熱量が足りないんじゃないか」と気後れしたり、「授業についていけるのか」と不安を感じたりしていました。ところが日々授業を受け、さらに2〜3年次から増えていく実験や実習に取り組むうち、その「深さ」にのめり込んでいきました。

例えば、食品学で学んだ「褐変反応」。リンゴを切ると断面が空気に触れ、茶色く変化する現象もその一種ですが、当たり前のように捉えていた身近な現象の理由やメカニズムを知って率直に「面白い!」と感じました。知らなかった世界がどんどん広がり、知識や経験が増え、学ぶほど深まる楽しさ。入学当初引け目を感じていたことなど忘れるほどに夢中になっていました。


大学に入学した頃から将来は食品会社へ就職したいと考えていました。健康栄養学科の先生に伝えていたこともあり、就職活動が始まる3年次の春学期、経営学部の実践科目『バーチャルカンパニー』に参加してみては、と声をかけられました。バーチャルカンパニーとは、企業や団体と共同で、課題解決に向けた新商品やサービスを企画・提案・カタチにする、ビジネスを疑似体験できる授業。私が参加したのは、経営学部と健康栄養学科の学生が一緒に授業を行う「食品開発」です。

週に1回、午前中に日進キャンパスで健康栄養学科の授業を受講後、経営学部のある名城公園キャンパスへ移動して4・5限にバーチャルカンパニーの授業を受講し、再び日進キャンパスへ戻るという息つく暇もないスケジュール。それ以上に驚いたのが、健康栄養学科との雰囲気の違いです。普段プレゼンする機会があまりない健康栄養学科では、そういう場に慣れていないため教室が静まりかえってしまうことも多いのですが、そんな私たちに対し、どんな場面でもはっきりと自分の意見を伝えて発表でも鋭く核心をつく、質の高い質問をぶつける経営学部の皆さん。圧倒されっぱなしでしたが、声をかけてくださった丸山先生からは「参加するなら最後まで、覚悟を持ってやりきって!」と気合のこもった言葉が(笑)。やるからには積極的に発言をしてやりきろうと、同じクラスの仲間2人と共に心を合わせました。
こうして様々な企業から出されたテーマがある中で、私たちのチームはクラフトビール製造時に出る麦芽の搾りかす「モルト粕」を使い、ビールに合う食品の開発に取り組み始めました。


学科の枠をこえて食品開発?!「やってみないとわからない」魂で挑戦!

搾りかすは通常なら廃棄されますが、実は栄養価がとても高い「モルト粕」。一方で、食品化するには香り(発酵臭)が強く、口の中に残る舌触りの悪さが課題でした。これらをどうクリアして、どんな食品にするか。健康栄養学科の3人で知恵を出し合って試作を繰り返しました。香りの強さは1度冷凍して再解凍することで調整したり、舌触りの悪さは細かくパウダー状にしてザラザラ感を消したり。食べやすくなる反面、モルト粕の食感や存在が食べて伝わらなければ意味がない…。どうすべきか葛藤しました。

▲赤羽さんとともにバーチャルカンパニーに参加した健康栄養学科のメンバー。企画力が高くて責任感の強いFくん、意見をまとめてアイデアを出す赤羽さん、スイーツ作りが得意で実行力のあるTさんと力を合わせました。


結果モルト粕が入っていることを感じる程度に香りをおさえつつ、口に残らない形状に調整することで一致。並行してどんな食品に取り入れるかという点で、チーズケーキ、クッキーシュー(上のクッキー生地)、パウンドケーキ、キッシュ、フライの衣、ポテトサラダに取り入れてみました。試作の度に学科の先生方や経営学部のメンバーに試食を依頼。「香りが強くない?」「この食品と合わせると口に残る感じが気になるね」といった率直な感想を踏まえ、翌週には意見を取り入れた新たな改善案を出さなければなりません。そのため毎日のように実習室で検討→試作を繰り返しました。

数え切れないほどの多様な試作を重ね、最終的にモルト粕の良さが活きる食品として適したのが「パウンドケーキ」でした。 その後、経営学部のメンバーのプレゼン力で期間限定ながら店舗販売を実現!今までにない達成感を味わった貴重な経験でした。

▲パウンドケーキが完成するまでの約3ヵ月間、バーチャルカンパニーの授業がある木曜日に試作品を食べてもらい、意見を収集。授業後日進キャンパスに戻り、先生方の協力のもと翌週木曜日までに改善案や試作を準備するというサイクルだったそう。


▲バーチャルカンパニーでの活動について取材を受けた健康栄養学科のメンバー。


「書」は商品の価値を伝える力にもなる。手に取ってもらう喜びを知った。

バーチャルカンパニーでモルト粕の食品開発に取り組む中、今度は創業100年をこえる老舗麺どころ、角千(かどせん)本店さんの商品パッケージの制作のチャンスが訪れました。商品は夏の定番『ざるきしめん』。2025年の夏バージョンとして、約3ヵ月間販売される商品パッケージを愛知学院とコラボすることになったのです。小学2年生から書道を習い、大学でも書道部に所属して様々な題字を書いていることから声がかかったわけですが、デザイン経験はゼロ。売上を左右する「商品の顔」を作る大役に不安がなかったわけではありません。それでも挑戦したい気持ちが勝り、「ぜひやらせて下さい!」と引き受けました。

最初に取り組んだのが、パッケージの中央に入る商品名『ざるきしめん』の題字です。実際に試食をし、イメージを膨らませました。ざるきしめんの特徴であるのどごし、涼やかさ、手作り感を出しながら店頭に並んだ時に消費者を引き寄せるインパクトをどのように「書」で表現するか。他社の類似商品もチェックして、角千本店のざるきしめん「らしさ」を自己流に偏りすぎない程度に強弱をつけながら、渾身の題字を2案書き上げました。経営学部の皆さんに意見をもらって題字をブラッシュアップして、次に取り組んだのは全体のデザインです。パッケージに添える商品写真を自ら撮影し、限られたスペースに商品名が際立つように和柄をあしらってみたり、写真やロゴの配置に迷ったり。試行錯誤しながら、ようやくレイアウトを完成させることができました。

▲題字を書く時は、情報をインプットした際に感じた鮮度をそのままに、まず1・2案書くそう。今回も「こんな感じでどうですか?」と確認してもらい、意見もらって太さやバランスを調整。再度提案して出来上がりました。最終的に印刷会社で細かいデザイン調整をしてもらって完成させました。


デザイン制作では当然ながら健康栄養学科で学んでいる内容とは全く異なる視点や考え方が必要で、消費者の心を動かす表現に悪戦苦闘しました。消費者の目線に立って考える初めての経験の数々。角千本店さんに見ていただくと「素敵だね。今までにない感じだね!」と言っていただけました。
そんな苦労と思いが詰まったパッケージが店頭に並ぶ日。道の駅マチテラス日進を訪問し、遠目から陳列コーナーを見つめました。すると、お客さんが笑顔で『ざるきしめん』を手に取ったのです!自分が手掛けた文字を載せた商品を買ってもらえたこの瞬間、嬉しさがぐっと込み上げ、ようやく「完成したんだ」という実感が湧きました。家族や祖母にも商品を見せると大喜び!長く続けてきた大好きな「書」が、文字を書くだけでなく、大切なものの価値を伝える力になることを身にしみて感じた経験でした。


書道で広がる縁。想像を超える世界と出会いへとつながっていった。

小学生の時から10年以上続けている書道は、様々な賞をいただくまでに上達し、高校時代は書道部に所属。文字を書くだけでなく、文字に想いを託して伝える「書道パフォーマンス」に心を揺さぶられ、大学生になっても書道は続けたいと思っていました。
大学入学後は迷うことなく書道部に入部。大学祭や学内外のイベント等で書道パフォーマンスを披露したり、書道の展覧会「愛学院書展」に出す作品を書いたりなど、幅広い活動の数々は普段の学びとは異なるワクワク感に溢れていました。さらに赤羽志乃としての「書」の可能性と表現が広がる出会いにもつながっていきました。


携わった中でも大きな作品の1つが、愛学のよさこいチーム「常笑」のタイトル文字です。チームのTシャツやパーカーに使っていただきました。これを機に北海道や福岡県、マレーシアのよさこいチームからも声がかかり、法被文字や大旗、シールなどにしてもらったり、楠元キャンパスで行われる「楠元祭」の法被文字も書かせていただきました。ほかにも竹内養蜂といった食に関わる企業の商品パッケージの文字、福岡でオープンするラーメン屋さんの看板文字、旗や賞状、トロフィー等につけるリボンの筆耕など、思いがけない場所・人・ジャンルの依頼をいただき、活動の幅が一気に広がっていきました。

こうしてたくさんの場面で書かせていただいた書が様々なところで「顔」として使われ、誰かの「価値」になっていく。そんなかけがえのないお手伝いが何度もでき、嬉しい経験ばかりでした。積極的に行動していくことは大切にしていましたが、こんなに多くの依頼をいただいたことは、まぎれもなく大きな自信につながりました。挑戦しなかったら自分の持っている可能性と世界を広げることはできなかったと確信しています。


結果は、投げ出さずに積み重ねた努力の証。「この場所で咲く」と決めたから。

学業、バーチャルカンパニー、部活、書の依頼など、どれも全力で取り組んできた4年間。入学時に母から『置かれた場所で咲きなさい』という言葉を掛けられた時には、やるからにはしっかりと取り組もうという気持ちはありましたが、地元の長野を離れ、新たな環境でうまくやっていけるのか正直不安でした。経営学部のバーチャルカンパニーの授業に参加した際には目が回るような忙しさで、要領よくできずに悩みながらも、どれも手は抜きませんでした。地道に取り組む大切さを書道を通して知っていたこと、そして誰かを支え、力を与える「言葉」にたくさん救われたからです。高校時代に書道パフォーマンスで知った『言霊に愛を宿せ』という言葉に心揺さぶられ、父からは『ピンチはチャンス』とエールをもらい、バーチャルカンパニーで行き詰まった時には丸山先生からの『千里の道も一歩から』という言葉に背中を押されました。とにかく一つずつ、一歩ずつ。まず何事もやってみて、コツコツと積み重ねることができたのは「努力は必ず形になる」と信じられたから。結果、健康栄養学科の首席(成績1位)をもらえるまでに成長できました。

▲正しい書き順を学ぶために通い始めた書道教室。小・中・高校時代は長野県の県展最高賞をはじめ、様々な賞をいただき、大学進学後も出展した展覧会などで数多く受賞。小学2年生からお世話になっている書道教室の先生のご指導と支えのおかげです。


「信頼される人」を目指して。新たな場所でも努力を惜しまず挑戦を続けたい。

現在は卒業を前に大学生活最後のチャレンジに取り組んでいます。1つ目はゼミ活動です。知多半島で養蜂業を営む竹内養蜂さんの蜂蜜を使って、地元のお弁当屋さんとコラボした商品を売り出そうという取り組みです。テーマは自由だったためバーチャルカンパニーでチームを組んだ同級生と一緒に、ゼミの木下先生に提案。料理の試作はもちろん、企画立案や提案書の作成などにも挑戦中です。最終的にパッケージの制作まで携わることが目標で、先生からも『当たって砕けろ』という力強い言葉をいただき、できるかできないかではなく、やってみるという精神で楽しんでいます。
もう1つが管理栄養士国家試験に向けた勉強です。難易度が高いチャレンジですが、高校時代の恩師からの『できなくてもできるまでやる!』という言葉を励みに、最後までやりぬく覚悟で頑張っています。

▲産学連携協定を締結している竹内養蜂さん。共同事業として長年、養蜂事業「AGU Bee Project」を実施しています。


卒業後は、希望が叶って食品系の会社に就職します。就活では愛知県内の企業も受けましたが、最終的に地元長野の老舗味噌・発酵食品メーカー、マルコメ株式会社に決めました。「誰かのすこやかな毎日を支えたい」という目標が、健康栄養学科での学びと愛知学院大学での数え切れないほどの挑戦を経て叶うなんて。高校時代には想像もしていなかった未来です。

就職活動中にはバーチャルカンパニーで一緒に学んだ同級生と、お互いの強みについて話す機会がありました。その時に言われたのが、私には誰も思いつかないような発想力と、そのアイデアを行動に移す力があるということ。客観的な視点から「ユーモアのある企画力と実行力」が自分の強みだと認識でき、社会人として一歩を踏み出すにあたって「信頼される人」「挑戦し続ける人」でありたいと思いました。信頼される上で最も大切なのは誠実さ。逃げずに踏ん張り続けた4年間を通して実感したことです。また、積極的に行動したことで道を切り開けた経験があるからこそ、新しいことに挑戦するのを恐れずに続けたいと強く感じています。


これから進路を考える人や、今まさに進路選択中の皆さんに伝えたいのは、大学はたくさん挑戦できる場所であるということ。学業でも趣味でも何でもいいんです。自ら動けばどんな道も可能性も広がるし、何より様々な価値観の人と出会えるのも大学の良さです。

将来について悩むこともあると思いますが、未来は「今」の連続と積み重ね。先のことを心配しすぎず、目の前のことから逃げずに取り組んでほしいなと思います。私自身、目指した進路が叶わずに絶望しましたが、当時周囲からは「その時にできることを、その時その時で精一杯やればいい。やるべきことをしっかりやりなさい」と言われました。すべて思い通りの順風満帆な人生はもちろん素晴らしいけど、思いがけない進路によって、思いがけない知識や経験、出会いを得て、深みのある人間に成長できるのも素敵なことだと思っています。

『振り返れば1本の道になっている』。大学生活を思い返し、恩師からもらったこの言葉をあらためて実感します。皆さんも大学で夢や希望を持って、挑戦を楽しめる日が訪れることを心から願っています。


これからも愛知学院大学のホットなトピックスを配信して行きます。
お楽しみに!
また今後、取り上げてほしいテーマなどありましたら、
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