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#032

2024.06.14

「面白い!」と思う気持ちのままに飛び込んだら、
次々とチャンスが巡ってきた!

心身科学部(現:心理学部)心理学科桑原 知宏 さん

高校生の時に「心理学」という学問があることを知った桑原さん。その面白さに興味が湧いてからは、大学で憧れの先生のゼミへ入ったり、難易度の高いコンテストへ参加したり、さらには学生に教えるSAを引き受けたりなど、積極的に飛び込むようになったそう。そんな一歩を踏み出すことができた理由は何か? 挑戦することで感じた思いは? 桑原さんのお気に入りでもある緑豊かな日進キャンパスでインタビューしました。


目の錯覚が引き起こす仕組みを深く学びたい。

目で見たものが実際とは異なって見えてしまう現象を「錯視(さくし)」と言います。私が所属する坂野先生のゼミでは、この錯視について「視覚の変な”クセ”がはっきりと現れる現象」として、ヒトの視覚機能とその仕組みを解明し、社会のあらゆる場所や場面で役立つ活用について研究しています。身近なところで言うと、交通事故の発生を防ぐための路面標示があります。例えば、スピードが出てしまいそうな直線道路に、あたかも段差があるかのようなマークを描くことで、減速する効果を引き出すというものです。立体ブロックのように見せる横断歩道もあります。

人間の目が引き起こす”勘違い”を上手く利用して交通安全につなげるなんてスゴい!視覚機能と心が結びつく心理学はやっぱり面白い!坂野先生のゼミを見学し、想像以上にテンションが上がりました。その一方で、先生の志の高さと熱意を前に「自分にできるのだろうか…」とひるんでしまったのも事実。でもどうしても視覚機能について学びたいという気持ちが勝り、坂野ゼミに入る決意を固めました。

ヒトの「視覚」について研究する先生との運命的な出会い。

愛知学院大学に入学した当時、心理学を学ぶのは心身科学部(現:健康科学部)の中にある心理学科でした。2年生になって「心理学部」が新設されると、坂野先生が新たに着任されました。僕自身、高校時代の進路選択から「大学進学するなら心理学を勉強したい」と気持ちは決まっていました。さらにその領域の中でも視覚機能を学びたいという一心で愛知学院大学を目指したほどです。入学から1年後。ヒトの視知覚の仕組みの解明と社会への応用を長年研究されている坂野先生から直接学べる機会がめぐってきたのです。僕にとって願ってもないチャンス、それが坂野ゼミだったのです。

▲3年生の4月から始まるゼミは、全部で15ゼミ。その1つである坂野ゼミは、桑原くんを含めて4年生は9名在籍し、それぞれの研究に向けて取り組んでいます。


『錯視・錯聴コンテスト』への参加。作品づくりのヒントは身近にあった。

3年生になって正式にゼミに入ると、坂野先生からゼミ生全員に『錯視・錯聴コンテスト』へ参加しようという声掛けがありました。目で見た時、耳で聞いた時に起こる錯覚のことをそれぞれ錯視(さくし)、錯聴(さくちょう)と言いますが、それらを表現した作品を全国から募集するというものです。いかに仕組みを理解し、作品に落とし込めるかが勝負とあって、作品のもとになるアイデア探しから難度の高さを実感しました。

決まらない焦りの中、他の授業の課題も並行して進めないといけない状況で、パワーポイントを使って資料作成していた時のこと。見やすくするために資料の中に2つの円を配置し、大きさや色などを調整していると、円が重なった部分の色が見るたびに違って見えることに気づいたのです。当時は「色が違って見えるほど疲れているんだ…」なんて思っていましたが、何度見ても同じ現象が繰り返されるばかり。思わず先生に報告に行きました。

▲上の画像は、桑原くんの錯視・錯聴コンテストでの受賞作品の基本原理である「色残効」です。上の十字の中心を10秒間注視した後、下の十字の中心を注視すると、その左右の白い正方形に色が見えてきます。

▲さらに左右それぞれの中心の正方形は同じ色ですが、周囲の色から反発する方向にずれた色に見えます。これを「色対比」と言い、これも錯視です。


「嬉しすぎます!」という先生からの返信に、コンテストの入賞を実感。

坂野先生は、円の重なった部分の色がグラデーションに見える仕組みについて説明してくださいました。そして、錯視の作品のアイデアとして問題ないと太鼓判もいただき、ようやく作品づくりを開始。ところが、次の難関がやってきました。アイデアを形にする調整作業です。円の大きさ、色の組み合わせ、重なる円の面積はどれくらいにして、その部分にどの程度の動きを施せば錯視が起こるのか。調整→実行→調整の繰り返しで、一筋縄ではいきませんでした。ただラッキーだったのは、コンテストの参加前から学部のプログラミングの授業で、様々な言語や使用できるソフトについて知識を持っていたことです。作品づくりに大いに役立ちました。完成までに半年ほどかかりましたが、無事に応募完了。緊張しながら結果を待っていると…なんと8位入賞という知らせが届いたのです!

思わず「ホントに?!」と声が出るほど驚き、坂野先生からも「嬉しすぎます」という返信をもらってようやく実感が湧いたほどでした。学びたいと思った分野で、作品を通して学びを深め、評価をいただけた経験は自分史上最高の喜びになりました。

▲上の画像は、桑原さんの作品「グラデーション錯視」の静止画です。実際は動画作品で、左右に動く白い点を目で追い続けると、中央の緑色の領域に、黄色〜青色のグラデーションが見えてきます。また、視線方向に応じて色が変わっているように見えてきます(青い円に近い方を向いている時は青っぽい領域が広がり、黄色い円に近い方を向いている時は黄色っぽい領域が広がります)。【愛知学院大学心理学部公式Instagramより抜粋。動画は同Instagramよりチェックできます】

▲桑原くんが入賞した第15回錯視・錯聴コンテストの授賞式は、日本基礎心理学会の公開イベントとして2023年12月2日に行われました。他の受賞者は大学院生以上のため、学部3年生の桑原君は最年少での受賞でした。


「心理学」の幅広さに目からウロコだった校内説明会。

心理学って、何だか奥が深くて面白そう。そう直感的に思ったのが、様々な大学の先生方が高校を訪れ、学びの特徴や学部の紹介などをする校内進学説明会でした。心理学という学問について初めて具体的に知ったのも説明会。中でも衝撃を受けたのが、目から受け取る情報が心や言動にも影響を与えているという話でした。目と脳と心が一直線につながる不思議さに心を奪われ、学問として学びたい領域はこれしかない!と思ったのです。


第一志望決定のカギは、オープンキャンパスにあり?!

高校生までは割と周囲の意見や考えに合わせて行動するタイプだったかもしれません。でも「心理学」という学問の存在を知ってから、愛知学院大学のオープンキャンパスに足を運び、模擬授業を体験したり、キャンパスの環境を確認したり、在学生の雰囲気が自分に合うかどうかを感じたり。授業の面白さと自然あふれる落ち着いた校風が決め手になり、第一志望として一般入試でチャレンジ。念願叶って入学することができました。


心理学科から「心理学部」へ。さらにSAに誘われ、今や副リーダー。

心理学部が新設されると、これまでの学びにデータサイエンスが加わりました。そもそも心理学では様々なデータを扱うことが多く、そうした数値をグラフ化して分析したり、プログラミングしたりする授業が増えることについては、新設前から興味を持っていました。とはいえ、数学は高校時代から得意ではなかったんです。それでも文系で学ぶ数学は理解できていたことと、パソコンも大学で初めて触ったほどですが、使う機会が増えて自然と慣れていきました。

「SAをやってみないか」と石田先生に声を掛けられたのは2年生が終わる頃です。SA(スチューデント・アシスタント)とは、先生のアシスタントとして授業に参加して学生のサポートをしたり、課題をする部屋では学年問わずにパソコンの操作方法などを教えたりするアルバイトです。声がかかった時は「え?自分が?」と意外に思ったくらい。もちろん初対面の人と話すのは緊張しますし、同じ内容でも人によって教え方を変えないと伝わらないこともありますが、ゼミの学びとは違う学びをたくさん得ています。4年になった今は副リーダーとして、SAの皆さんの指導役を担っています。

▲誰とでもフランクに話せるタイプではなかったという桑原くん。チャレンジしてみると予想に反して板についたそう。授業と並行して様々なソフトに関する知識や使い方を覚えるのは難しいものの、3年生の終わりにはSA講習会を受け、副リーダーになり、現在20人ほどいるSAを取りまとめています。


やりたいと思った時が行動の時。挑戦する価値は必ずあるから。

「心理学って面白そう!学んでみたい!」という好奇心で飛び込んだ大学で、驚くほど行動的になったように思います。これまでは自ら手を上げてチャレンジするタイプではなかったのに、視覚のスペシャリストである坂野先生のゼミに入り、錯視・錯聴コンテストでは何とか形にすることができ、地道にコツコツと取り組むのが嫌いじゃないこともわかりました。さらに人に教えるSAのアルバイトもやっている。こんな充実した大学生活、高校時代は想像していませんでした。振り返って思うのは、どんなことにも取り組む意味があって、経験によって行動力、継続力、コミュニケーション力が磨かれるということ。結果的に難しい挑戦になったとしても、時に失敗しても、チャレンジすることそのものに価値があることがわかり、専門の学び以上の大きな学びを得ています。

これからも愛知学院大学のホットなトピックスを配信して行きます。
お楽しみに!
また今後、取り上げてほしいテーマなどありましたら、
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